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2008年11月30日 (日)

◆インド・ムンバイのテロと世界 2008.11.29

 インド最大の商業都市ムンバイで26日、同時テロが発生した。治安組織の警備をかいくぐり、ほぼ同時に10か所以上を襲撃した犯行は従来にない手口。銃撃戦に至る経緯は世界に同時中継され、衝撃を与えた。世界の成長センターと期待されるインド経済への打撃や、南アジア情勢悪化の懸念など影響は大きい。

▼新型テロ
 テロは26日夜、ボンベイのチャトラパティ・シバジ駅やタージ・マハル・ホテル、トライデント・ホテル、ユダヤ教関係施設など10か所以上でほぼ同時に発生。タージ・マハルホテルなどでは人質を取って立て籠った。ホテルでは米国人や英国人を狙い撃ちにした。
 約2日後に治安部隊が突入して平定したが、死者は少なくとも190人以上の惨劇になった。
 インドではこれまで列車爆破や自爆テロなどはあるが、今回のように周到な準備の下に行われた同時多発テロは初めて。「新段階のテロ」との指摘も多い。

▼国際組織の関与
 シン首相は事件発生直後に会見し、事件への国際組織への関与を示唆した。
 犯行には少なくとも25人以上がかかわったとされる。犯人の一部は事件直前にボートでタージ・マハル・ホテル付近の海岸に上陸。また一部は、ホテルには数日前から宿泊し建物の内部を熟知していた。綿密な計画といい実行力といい、プロの手口だ。
 犯人の一部はパキスタンの言語であるウルドゥ語を語っていた模様。また拘束した犯人の少なくとも1人はパキスタン人との情報も流れている。
 犯人はデカン・ムジャヒディン(イスラム聖戦士)と名乗り、これまでのテロなどで拘束されているムジヒディンの解放などを求めた。この組織名が過去表明されたことはなく、正体は不明だが、イスラムが一つのキーワードになる。
 いずれにしろ、イスラム過激派と関係ある国際組織の関与の可能性が高く、アルカイダの関与を指摘する見方も強い。

▼インド社会への悪影響
 テロがインド社会に与えた影響は大きい。インドはここ数年開放政策の下に高成長を実現。中国と並ぶBRICsの代表格として世界の成長センターとして期待が高まっていた。
 インドには宗教対立、カースト制の弊害、格差拡大などの問題が残る。しかしここ数年は、こうした社会的な問題より経済成長に光が当たっていた。
 今回のテロで、インド社会のリスクに再度焦点が当たるのは必至。特にムンバイは金融機関などが集中する商都だ。程度は不透明だが、外資流入などに悪影響が出るのは避けられないだろう。

▼南アジア情勢
 地域の安全保障への影響も、過小評価すべきでない。
 テロ組織の活動はもともと国境に縛られないが、今回の事件はその波がインドに及んだことを印象付けた。
 アフガニスタンではここ数年タリバンが勢力を回復、情勢悪化が加速している。最近は首都カブールでもテロが頻発し、27日にはカブールの米大使館付近で自爆テロが発生、4人が死亡した。
 パキスタンでは対テロ戦争の先頭に立ってきたムシャラフ前大統領の政権が昨年から権威失墜。今夏に大統領退陣に追い込まれた。後を継いだザルダリ政権の基盤は弱く、対テロ政策の腰は定まらない。9月にはイスラマバードのマリオットホテル爆破テロで数十人が死亡した。
 パキスタン情勢混乱でアフガンとの国境地域を本拠とする国際テロ組織は勢力を拡大しているとの観測が専らだ。
 インドでもテロ頻発となれば、南アジア全体の安全保障が揺らぎかねない。
 ただでさえ経済悪化で人々の不満は増大。過激派が勢力を伸ばしやすい情勢になっている。今回のテロはそうした状況の下で起きた。南アジアの安全保障の節目となってもおかしくない。

▼視点の転換
 テロは経済や安全保障のような実際の事象だけでなく、国際情勢の認識や世界を動かす理念にも影響するかもしれない。
 インドは政治的には選挙で何度も政権交代を実現した世界最大の民主国家。一方、経済的には1980年代から開放経済政策を取り入れ、高度成長を実現してきた。
 こうした中で多数派のヒンズー教徒と少数派のイスラム教徒、仏教徒、シーク教徒らが問題を抱えながらも共存。カースト制など弊害の是正にもある程実成果を残し、社会的安定も保ってきた。
 インドへの期待と楽観的な展望も、こうした民主主義と市場経済、開放経済の共存という「インド型成功モデル」の上に成り立ってきた面がある。テロはそうした成功神話を曇らせる。
 金融危機は自由市場万能主義の終焉をもたらした。それに続く今回のテロは、世界を見る視点に再度抜本的な問いを投げかける。

(2008.11.29) 

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