◆米一般教書の中身 2012.1.29
オバマ米大統領が3回目(そして第1期最期)の一般教書演説を行った。大統領選を意識して過去3年の成果の強調が目立ち、野党共和党とは対決色が強まった。11月の大統領選をにらんだもので、メディアの評価も高くない。それでも教書には、米国の直面する課題と問題意識が凝縮されており、世界を見るうえでは欠かせない。ポイントを整理してみた。
▼経済強化に製造業復活、富裕層課税
今年の一般教書の特徴は、(1)昨年に引き続いて経済の強化を強調した(2)政権の成果を強調。昨年に比べば野党共和党との対決色が濃くなり、大統領選対策の色彩が強まった、などだろう。
経済政策では、製造業の復活を強調した。持続する経済を実現する青写真は「製造業から始まる」と明言。GMの復活や自動車業界における雇用拡大を強調した。製造業復活を支えるための財政や海外市場開拓支援、教育の強化なども強調した。
一方で金融規制の必要性を改めて強調。財政問題では2兆ドル以上の財政削減で合意していることを確認した上で、富裕層の課税強化の必要性を訴えた。
概して中間層の利益を意識した内容だ。
昨年の一般教書では、2010年中間選挙での下院敗北を受けて野党共和党との協調を前面に打ち出した。しかし、その後の議会審議は対立が続いている。今年は11月の大統領選をにらみ、対決色を前面に打ち出した格好。富裕層課税の強化、金融規制などはその象徴だ。
▼厳しいメディアの評価
メディアの評価は概して厳しい。英Economistは、オバマ演説はこれまで心に訴えるものでヴィジョンがあり、変幻自在であったが、今回の演説はどれでもないと評価。dire(恐ろしい、あるいは切迫した)と見出しを付けた。英Financial Timesも説得力が欠如していると論じた。
そうはいっても、一般教書を通した世界像は、国際情勢の定点観測には欠かせない。経済・外交に分けてポイントを羅列する。
▼経済政策の主なポイント
>>経済情勢: 過去22か月で300万人の雇用を創造。経済は徐々に強くなっていると、成果を強調した。
>>製造業復活に重点: 持続性がある経済の青写真は、製造業から始まる。GMやクライスラーは復活し、自動車産業で16万人の雇用を生み出したと強調。国内雇用拡大に結びつく税制面の支援の実施、海外販売拡大支援などを約束した。
>>教育: 経済強化のために学べる機会を拡充すると実例を交えて強調した。移民政策では、不法入国者は厳しく取り締まるが、能力ある人を締め出すべきではないと主張。
>>エネルギー政策: クリーンエネルギー政策推進を確認。過去1世紀の石油産業への助成→クリーンエネルギーへ投資が必要と強調した。
>>インフラ整備の推進: 経済発展に必要なインフラの整備推進を確認。
>>金融規制改革・消費者保護: 無責任な行動を防止する規制が必要と主張。金融犯罪の取り締まりを強化すると説明した。住宅ローンの借り換え支援策を提案した。
>>財政赤字・税制: 富裕層の4分の1が中間層より低い税率で税を払っているとし、バフェット・ルールに沿った税再改革が必要と訴えた。官僚機構スリム化のために大統領への権限付与をアピールした。
▼外交政策
>>イラク・アフガン・テロ: 先月イラクの駐留部隊が帰国。アフガンからも撤収が始まっていると(演説の冒頭含め)重ねて説明。ビンラディンはすでにないと成果を強調した。
>>イラン: 核兵器の入手を断固阻止。いかなる選択肢も排除しないと強調した。同時に平和的解決は依然可能との認識を示した。
>>米国は太平洋国家: 先のアジア太平洋訪問時の説明を改めて強調。
>>ミャンマー: 新しい動きが新たな希望をもたらしたと評価。
>>米国の役割と新国防戦略: 我々がすべてをコントロールすることはできないが、米国は不可欠な国家であるとの認識を覚悟を強調。新国防戦略でも世界で最も優秀な軍を維持する旨約束したと説明した。
2012.1.29
