2012年1月29日 (日)

◆米一般教書の中身 2012.1.29

 オバマ米大統領が3回目(そして第1期最期)の一般教書演説を行った。大統領選を意識して過去3年の成果の強調が目立ち、野党共和党とは対決色が強まった。11月の大統領選をにらんだもので、メディアの評価も高くない。それでも教書には、米国の直面する課題と問題意識が凝縮されており、世界を見るうえでは欠かせない。ポイントを整理してみた。

▼経済強化に製造業復活、富裕層課税

 今年の一般教書の特徴は、(1)昨年に引き続いて経済の強化を強調した(2)政権の成果を強調。昨年に比べば野党共和党との対決色が濃くなり、大統領選対策の色彩が強まった、などだろう。

 経済政策では、製造業の復活を強調した。持続する経済を実現する青写真は「製造業から始まる」と明言。GMの復活や自動車業界における雇用拡大を強調した。製造業復活を支えるための財政や海外市場開拓支援、教育の強化なども強調した。

 一方で金融規制の必要性を改めて強調。財政問題では2兆ドル以上の財政削減で合意していることを確認した上で、富裕層の課税強化の必要性を訴えた。

 概して中間層の利益を意識した内容だ。

 昨年の一般教書では、2010年中間選挙での下院敗北を受けて野党共和党との協調を前面に打ち出した。しかし、その後の議会審議は対立が続いている。今年は11月の大統領選をにらみ、対決色を前面に打ち出した格好。富裕層課税の強化、金融規制などはその象徴だ。

▼厳しいメディアの評価

 メディアの評価は概して厳しい。英Economistは、オバマ演説はこれまで心に訴えるものでヴィジョンがあり、変幻自在であったが、今回の演説はどれでもないと評価。dire(恐ろしい、あるいは切迫した)と見出しを付けた。英Financial Timesも説得力が欠如していると論じた。

 そうはいっても、一般教書を通した世界像は、国際情勢の定点観測には欠かせない。経済・外交に分けてポイントを羅列する。

▼経済政策の主なポイント 

>>経済情勢: 過去22か月で300万人の雇用を創造。経済は徐々に強くなっていると、成果を強調した。

>>製造業復活に重点: 持続性がある経済の青写真は、製造業から始まる。GMやクライスラーは復活し、自動車産業で16万人の雇用を生み出したと強調。国内雇用拡大に結びつく税制面の支援の実施、海外販売拡大支援などを約束した。

>>教育: 経済強化のために学べる機会を拡充すると実例を交えて強調した。移民政策では、不法入国者は厳しく取り締まるが、能力ある人を締め出すべきではないと主張。

>>エネルギー政策: クリーンエネルギー政策推進を確認。過去1世紀の石油産業への助成→クリーンエネルギーへ投資が必要と強調した。

>>インフラ整備の推進: 経済発展に必要なインフラの整備推進を確認。

>>金融規制改革・消費者保護: 無責任な行動を防止する規制が必要と主張。金融犯罪の取り締まりを強化すると説明した。住宅ローンの借り換え支援策を提案した。 

>>財政赤字・税制: 富裕層の4分の1が中間層より低い税率で税を払っているとし、バフェット・ルールに沿った税再改革が必要と訴えた。官僚機構スリム化のために大統領への権限付与をアピールした。

▼外交政策

>>イラク・アフガン・テロ: 先月イラクの駐留部隊が帰国。アフガンからも撤収が始まっていると(演説の冒頭含め)重ねて説明。ビンラディンはすでにないと成果を強調した。

>>イラン: 核兵器の入手を断固阻止。いかなる選択肢も排除しないと強調した。同時に平和的解決は依然可能との認識を示した。

>>米国は太平洋国家: 先のアジア太平洋訪問時の説明を改めて強調。

>>ミャンマー: 新しい動きが新たな希望をもたらしたと評価。

>>米国の役割と新国防戦略: 我々がすべてをコントロールすることはできないが、米国は不可欠な国家であるとの認識を覚悟を強調。新国防戦略でも世界で最も優秀な軍を維持する旨約束したと説明した。

2012.1.29

2012年05号(1.22-29 通算605号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2012年1月22-29日
 

◆米一般教書、製造業復活を強調(24日) ☆
・オバマ大統領は米議会で一般教書演説を行った。
・製造業の復活をテコに米経済の成長を追及する方針を強調。
・富裕層への課税強化などを通じ所得再分配を進める考えも表明した。
・経済の競争力強化を打ち出したのは前年と同じ。
・しかし今回は政権の成果を強調。昨年に比べ野党・共和党との対決色を出した。
・11月の大統領選をにらんで、選挙対策色が強いものになった。

◆EU、イラン原油禁輸決定(23日) ☆
・EU外相理事会はイラン原油の禁輸措置を正式決定した。
・新規契約は即時禁止。既存契約は7月1日から禁輸措置とする。
・イランは反発。ホルズム海峡閉鎖などをちらつかせる。
・イラン核開発を巡る対立は緊張を増している。

◆アラブ連盟、シリア大統領退陣要求(22日) ☆
・アラブ連盟はアサド大統領の退陣を含む体制移行を勧告した。
・2月以内に副大統領に権限を委譲し、挙国一致内閣を発足させる内容。
・大統領は即座に拒否した。
・GCCは24日、アラブ連盟派遣の監視団からGCC出身者を引き上げると発表した。
・国連でもシリア非難や大統領退陣要求決議が検討中。ただしロシアは慎重姿勢。
・シリアの孤立化が一段と進み、同国情勢は重要な局面を迎えようとしている。

◆エジプト議会選、イスラム系政党が圧勝(21日) ☆
・選管は、昨年末から3回に分けて実施した議会選の最終結果を発表した。
・イスラム政党が議席(498)の3分の2を獲得した。選出は比例代表(2/3)と選挙区(1/3)。
・ムスリム同胞団系のFJPが498議席中47%強を獲得。イスラム保守派のヌール党がこれに続いた。
・23日には初議会が招集、新憲法制定に向けた調整が始まる。
・同国はイスラム系政党主導の下で、大統領選をにらむ展開となる。

◆米が2014年までゼロ金利政策(25日) ☆
・FRBは事実上のゼロ金利を少なくとも2014年まで継続する見通しを表明した。
・従来見通しより1年延長した。
・市場により長期の金利見通しを示すことで、緩和効果の増加→経済安定を狙った。
・同時に長期的な物価目標を年率2%に設定した。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース                  
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
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 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【アラブの春1年】 中東各地で重要な動きが相次いだ。アラブ連盟はシリアのアサド政権に事実上の退陣要求を突き付けた。国連ではシリア非難決議などの調整が進み、シリアの孤立化が一層進んだ。
 イラン核問題を巡る同国と米欧との対立は一段と激化。EUはイラン原油の禁輸措置を決めた。ホルズム海峡の封鎖、イスラエルによるイラン攻撃などのきな臭い情報が現れは消える。
 エジプト選挙の結果が判明。イスラム系政党主導の体制となることが確定した。
 イエメンのサレハ大統領は22日、米国で治療を受けるためにオマーン経由で出国した。同大統領は昨年11月にGCC調停の退陣案にようやく署名したが、同国で大統領はと反対派の衝突が続く。2月の大統領選をにらみ波乱含みの状況が続く。
 仏上院は23日オスマン・トルコ時代のアルメニア人虐殺否定に罰則を定める法案を可決。同法は成立した。トルコはこれに強く反発。仏・トルコ関係は緊張を強めた。
 アラブの春から1年が経過した。情勢は定まらない。

 【一般教書と米国の動向】 米国でも重要なニュースが続いた。一般教書は製造業復活をテコにした経済再生をうたったものの、選挙戦にらみの強い色彩になった。FRBはゼロ金利が2014年まで続くとの見通しを表明し、金融緩和長期化が一段と強く盛り込まれた。パネッタ国防長官は今後5年で国防予算を2600億ドル削減し、地上部隊を10万人削減する計画を発表した。先にオバマ大統領が発表した新国防戦略を具体化するもの。陸軍は57→49万人、海兵隊は20→18万人に削減。F35ステルス戦闘機の導入先送りなどを予定している。大統領選の共和党予備選は第3戦のサウスカロライナでギングリッチ元下院議長が勝利。ロムニー前マサチューセッツ州知事本命から混戦色が強まり、長期化の可能性もつよまった。

 【ダボス会議】 ダボス会議が25日に始まった。欧州通貨危機や世界経済などがテーマ。世界経済では中国への期待も焦点になった。ただ、中国からの指導者の参加は春節(23日から)のためなく、主役の一人を欠いた会議の感も強い。

◎今週の注目(2012.1.30-2.3)&当面の注目
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・EU首脳会議は30日。ユーロ危機が議論の中心。

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2012年1月21日 (土)

2012年04号(1.16-21 通算604号)  国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2012年1月16-21日

◆ウィキペディアが24時間停止、新旧メディアの対立激化(18日)☆
・ウィキペディア(同財団運営)は英語サイトを24時間停止した。
・米議会で審議中の著作権保護法案に抗議するため。
・同法案はプロバイダーに、海外海賊版サイトへの接続を禁じる内容。
・映画や音楽産業は法案を支持。一方ネット業界は表現の自由を妨げると反対する。
・グーグルも同日反対を表明。オバマ政権も厳法案には反対姿勢。
・著作権保護と表現の自由を巡り、新旧メディアが対立している。

◆コダックが破産法申請(19日)☆
・米イーストマン・コダックはNY地裁に破産法11条の適用を申請した。
・かつてはフィルム界の巨人だった優良企業。75年には世界初のデジカメを開発した。
・しかしフィルム事業に依存し、デジカメなどで立ち遅れ。業績が悪化した。
・昨年末以降は株価が1ドルを割っていた。
・今後デジタル画像事業で再生を目指すが、競争は激しく行方は不透明だ。
・同社破綻はイノベーターのジレンマの典型とされる。
・米産業ではコダックに代わる新興企業が次々成長。新陳代謝は速い。

◆世界、経済見通し下方修正(17日)☆
・世銀は2012年の世界経済見通しを2.5%に下方修正した。
・昨年6月の3.6%予測から大幅に引き下げ。ユーロ圏はマイナス0.3%と見込んだ。
・欧州債務危機など深刻なリスク要因を抱えていると分析。
・リーマン・ショックに匹敵する危機の瀬戸際にあると警鐘を鳴らした。
・世界経済は金融危機後の09年マイナス2.3%。10年は4.1%。11年は2.7%だった。

◆中国都市人口が農村逆転(17日)☆
・国家統計局は2011年末の人口統計を発表した。
・都市人口が6億9079万人(51.3%)となり、初めて農村人口(6億5656万人)を上回った。
・過去1年で2100万人が年に流入した。
・全人口は13億4735万人。
・1949年の建国時点の都市人口比率は10.6%。今後20年で75%まで上昇する見込み。
・日本の都市人口は66%、米国は82%。インドは29%。

◆EUがイラン中銀資産凍結決定(18日)
・EUはイラン中銀の資産凍結を決めた。同国への追加制裁措置。
・イラン原油の全面禁輸は7月1日実施が提案され、詰めの議論を進める。

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◎寸評:of the Week
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 【ネットのニュース】 現代はネット・IT革命の時代。1990年代以降、インターネット、携帯、SNS、スマホなどが世界を動かしてきた。2011年のアラブの春はネットが大きな力を発揮したし、メディア規制も新たな時代を迎えている。サイバー攻撃も現代の世界を左右する。今週起きたウィキペディアの停止は著作権と表現・ビジネス活動の自由をめぐる新旧メディアの対立をうき立たせた。コダックの破たんは、デジタル時代の新旧交代を物語る。

 【パキスタンの混迷】 パキスタン政府・軍の対立が一段と深刻化した。最高裁はザルダリ大統領の汚職疑惑への対応で、首相に出廷を要求した。首相は19日出廷した。最高裁の背後には軍の働きかけがあるといわれる。軍と政府は、昨年秋以降対立し、クーデターのうわさも絶えない。パキスタン情勢から目が離せない。

◎今週の注目(2012.1.22-29)&当面の注目
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・オバマ米大統領の一般教書演説が24日行われる。
・ダボス会議が25日から始まる。
・ユーロ危機は前週は一服。今週はどう動くか。

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2012年1月15日 (日)

◆台湾総統選と中台関係 2012.1.15

 台湾総統選は現職の国民党・馬総裁が再選した。中台関係は当面、「融和前面」、「経済関係拡大」の現状路線が維持される見通しだ。

▼過去20年の中台関係

 1990年代から2008年まで中台関係は安保を巡り緊張をはらんで推移した。

 1996年には台湾初の総統選が行われ、現職総統(当初は直接選挙での選出ではなかった)李登輝氏が当選した。李氏は「台湾は中国と別の国家」と主張。「台湾は中国の一部」とする中国の反発を呼んだ。こうした中で中国は台湾海峡で軍事演習を展開、台湾海峡ミサイル危機を引き起こした。

 2000年に当選した民進党の陳水扁総統も中国と距離を置く政策を維持。中台関係は安全保障・政治面では冷たいまま推移した。

▼馬総統下で中台関係強化

 この流れを変えたのが2008年に当選した国民党の馬英九総統。馬氏は「1つの中国」論(台湾が中国に吸収されるというわけではない)で台湾独立色を薄める一方、経済関係強化を推進。関税引き下げや貿易・投資の制限を減少した。2010年には中国と自由貿易圏を目指す経済協力枠組み協定を締結した。また航空路線拡大などの策を打ち出した。

 こうした中でEMS世界最大手の鴻海精密工業など大手台湾企業が次々に中国に進出。経済の相互依存は急速に強まった。人の交流も急速に拡大。今や年間百万人単位の観光客が相互を訪問している。

▼有権者の反応

 今回の総統選で、台湾の大手企業経営者がこぞって馬氏支持に踏み切った。これも、ビジネス拡大には経済関係強化路線が不可欠との判断からだ。

 一方、台湾が中国にのみこまれるという懸念は消えない。また馬政権の経済政策が格差拡大を生んだとの批判も根強い。こうした声が、蔡氏への支持につながった。

▼当面の現状維持

 台湾の人々の本音は、独立をあえて唱える必要もないが、中国に飲み込まれるのは御免という味方、と指摘される。いわば現状維持だ。中国も、香港に倣った「1国2制度制度」を掲げ、当面は事実上、現状を認めている形だ。

▼長期的展望

 より長期的な視点で見ると、風景は変わってくる。そもそも台湾は、中国共産党の国共内戦勝利と1949年の中華人民共和国成立に伴い出来た。中国は、「台湾は中国の一部」という主張を引っ込めるべくもない。将来情勢が変われば、中台間に安全保障上のどんな問題が生じても不思議ではない。

 そもそも数十年単位で見れば、中国の行方も不透明だ。今の勢いで世界1の経済大国になる可能性もあれば、大きな政治問題に直面し体制が変わる可能性も否定できない。

 中台関係は当面、「安保や領土問題では現状維持」と「経済関係拡大」を軸に推移する可能性が大きい。総統選は、そうした状況を映した。しかし、長期的には多くの不透明要因を含んでいる。

2012.1.15

2012年03号(1.9-15 通算603号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2012年1月9-15日
 

◆台湾総統選、馬英九氏再選(14日) ☆
・総統選が行われ、国民党の馬英九氏が再選された。
・馬氏は51.6%を獲得。野党・民進党の蔡英文主席は45.6%だった。
・馬氏は08年の就任以来、中国との融和を重視。経済関係を強化した。
・これに対し蔡氏はより独立志向を強調。現政権下の格差拡大も批判した。
・馬氏再選で、融和路線が当面支持された形だ。
・ただし馬氏の得票率は08年選挙より低下。世論も割れていることをうかがわせた。
・同時に実施した総選挙も国民党が過半数を維持したが、議席を減らした。
・中台関係は当面現状路線で推移しそう。緊張が高まる懸念は後退した。

◆S&Pが仏など9か国の国債格下げ(13日) ☆
・S&Pはユーロ圏9か国の国債格付けを1-2段階引き下げた。
・仏、オーストリアは最上級のトリプルA→ダブルAに下げ。伊、スペインは2段階下げた。
・引下げ→国債利回り上昇→資金調達コスト上昇→EUの危機対応能力低下、の懸念がある。
・EUは昨年12月、財政規律強化の新条約など対応策を決定。ユーロ危機は小休止状態。
・しかし危機はくすぶり続けており、格付け引下げが新たな懸念材料となる恐れもある。

◆ミャンマーが政治犯釈放、米は大使復活の方針(13日)☆
・政府は、先に恩赦を与えた政治犯約650人の釈放を決めた。
・1988年の民主化運動で逮捕された著名な政治犯も含まれる。
・12日には47年の独立以来内戦を続けてきたカレン族と停戦に著名した。
・野党指導者アン・サン・スー・チー氏は4月の補選への出馬を正式表明した。
・米国は一連の民主化の動きを評価。臨時大使級→大使派遣の方針を表明した。
・昨年11月末には国務長官が57年ぶりに同国を訪問。関係改善が加速している。
・経済制裁解除の可能性も指摘される。

◆パキスタン首相が国防次官解任、軍・政府の対立激化(11日)☆
・パキスタンで政府と軍の対立が表面化。クーデターの観測まで出ている。
・ギラニ首相は11日、軍人事不介入の慣例を破り、軍出身のロディ国防次官を解任した。
・軍は決定を非難。「重大な結果をもたらしかねない」と警告した。
・政府は昨年末、軍クーデターを恐れ米軍に協力を求めたとされる。これを機に対立が深まった。
・米国はかねて軍情報局(ISI)がアフガンのタリバンなどと結び付いていると見ている。
・最高裁と政府の関係も微妙。最高裁は近く政府の汚職対策に関する判断を下す。
・パキスタン情勢の混乱が深間rふぇば、南アジア全体への影響も大きい。

◆米欧がイラン包囲網、緊張高まる ☆
・米国・欧州とイランの緊張が高まっている。
・クリントン米国務長官は10日、イランにウラン濃縮の即時停止を求める声明を発表。
・ガイトナー財務長官を中国、日本などに派遣。イラン原油輸入削減などを求めた。
・EUはイラン原油禁輸で原則合意。具体策を詰める。
・これに対しイランはホルズム海峡封鎖をちらつかせ、軍事演習などで対抗している。
・アハマディネジャド大統領はベネズエラなど中南米を訪問。欧米の包囲網に対抗する。
・中国、ロシアは今のところ追加制裁には慎重姿勢。
・イラン核問題は10年来の懸案。昨年末に新たな疑惑が浮上、米欧は制裁強化に動いている。

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◎寸評:of the Week
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 【重要ニュース】 新年第2週は重要ニュースが相次いだ。台湾総統選は馬英九総統の再選で、中台関係は当面現状維持となりそう。S&Pがユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げ、ユーロ危機がまた深まった。ミャンマー民主化が進み、米欧などとの関係改善の兆しが出てきた。核疑惑を巡るイランと米欧の緊張は激化。ホルズム海峡封鎖の脅しも出て緊迫が増している。パキスタンでは政府と軍の対立が深刻化し、クーデターの懸念も高まった。

 【見逃せないニュース】 ナイジェリアではキリスト教徒とイスラム教徒の対立に根差す混乱が激化した。マレーシアでは同性愛容疑に問われたアンワル元副大統領が無罪となり、今後の政局に影響を及ぼしそう。スイス中銀総裁が夫人の外貨取引に絡む疑惑で辞任した。

 【オバマ政権の憂鬱】 オバマ政権のデイリー首席補佐官が辞任。後任にルー行政管理予算局長が就任する。政権発足3年足らずで首席補佐官は4人目。政権の求心力低下が指摘される。一方、オバマ政権は13日、USTRなど6つの政府機関を統合する案を発表した。政府の効率化を図るとするが、思惑通り進むか。米国の12月の失業率は8.5%に低下。ちょっぴり明るいニュースだ。

 【アフガン捕虜侮辱】 アフガンの米兵がタリバン捕虜の死体に小便をかけている映像が流出。アブグレイブ収容所での捕虜虐待事件があるだけに、また販米感情に火を付ける結果になりかねない。どう展開するか無視できない。
 

◎今週の注目(2012.1.16-22)&当面の注目
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・エジプト総選挙の結果が出る。イスラム系政党の躍進は確実。その後の政治展開に注目。
・ユーロ圏9カ国格下げを受けて市場の動向に注目。ユーロ安の進展はある程度織り込み済みだが。
・1月中の注目は、米一般教書(24日)、台湾総統選(14日)、ダボス会議、フィンランド大統領選(23日)など。

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2012年1月 8日 (日)

2012年02号(1.2-8 通算602号) 国際ニュース・カウントダウン

◎国際ニュース・週間カウントダウン: 2012年1月2-8日

◆米、国防戦略見直し、2正面戦略放棄、アジア重視鮮明(5日)☆
・オバマ大統領は国防戦略の見直しを発表した。
・国防費を大幅に削減(10年で4900億ドル)。陸軍は57万→49万人に減らす見込み。
・2つの大規模紛争に対応する2正面戦略を放棄。1紛争に対処し、第2地域では抑止する。
・アジア太平洋を優先。地域の軍事水準を維持する。中国の台頭は脅威と認識した。
・サイバー防衛強化なども打ち出した。
・新戦略に沿って、次年度の予算や防衛計画を定める。
・米国防政策の転換点になり、世界の安全保障に与える影響も大きい。

◆共和党予備選開始、アイオワでロムニー氏勝利(3日)☆
・米大統領選共和党予備選がスタートした。
・アイオワ州党員集会ではロムニー前マサチューセッツ州知事が僅差で勝利した。
・同氏は中道。保守派のサントラム元上院議員らを破った。
・共和党指名争いは混迷している。

◆タリバンが海外事務所(3日)
・アフガンのタリバンが国外に連絡事務所を設置する。米などと基本合意した。
・場所は中東が有力視されている。
・米国など国際社会との窓口になり、対話が進む可能性がある。
・タリバンと米国などは水面下で和平交渉を模索してきたされる。

◆イラクで爆弾テロ、宗派対立激化の懸念(5日)
・バグダッドでシーア派地区を狙った連続爆弾テロが発生。少なくとも29人が死亡した。
・南部ナシリアでも自爆テロがあり、38人が死亡した。
・同国では最近、シーア派のマリキ首相とスンニ派有力政治家の対立が激化。
・宗派対立を背景にしたテロが頻発している。
・昨年12月の米軍撤退以降、混乱が拡大している。

◆南スーダン、部族衝突多発
・東部ジョングレイ州で昨年末以降、部族間の武力衝突が頻発。3000人以上が死亡した。
・同国は20年続いた内戦中に、武器が拡散している。
・昨年7月の独立以降も、治安は悪い。
・国連PKOがかろうじて悪化を防いでいる形だ。

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 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【2012年】 2012年が始まった。イラク、アフガニスタン、ナイジェリア、南スーダンなどで紛争は続くが、全体的には比較的静かなスタート。

 【米軍がイラン漁船救出】 米海軍空母の機動部隊がアラビア海で海賊に拘束されていたイラン漁船を救出した。乗組員は13日で、40日以上ソマリア人とみられる海賊に拘束されていた。イランは当初事実関係の確認ができないなどとコメントを控えていたが、その後米国に感謝する意向を示した。米国とイランは核開発や経済制裁などを巡り、緊張が高まっている。今回の事件が雪解けのきっかけになるほど甘い状況ではないが、普段見ることのできないイランの反応をうかがうのは興味深い。

 【殺人事件と人種差別】 英刑事裁判所は18年前の黒人青年殺害事件を巡り、白人男性2人に殺人の有罪判決を下した。2人は当初から有力容疑者だったが、警察の人種偏見と捜査ミスで不起訴になっていた。青年の両親の訴えで世間の関心が集中。英国における人種差別問題の象徴のようになっていた。日本ではほとんど関心外の事件だが、国境を超えた意味がある。

◎今週の注目(2012.1.9-15)&当面の注目
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・台湾の総統選が14日行われる。馬英九総統が再選されるか微妙。中台関係の行方にも影響する。
・エジプト選挙の3回目(最後)の投票が行われる。
・1月中の注目は、米一般教書(24日)、台湾総統選(14日)、ダボス会議、フィンランド大統領選(23日)など。

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2012年1月 1日 (日)

◆2012年の焦点 2012.1.1

 2012年が始まった。今年は米大統領選や中国の指導者交代など、主要国でトップ交代や選挙がある節目の年。前年から引き続く中東革命の行方、ユーロ危機など経済・市場の動向も大きなテーマだ。FT(英フィナンシャル・タイムズ)の年次展望も材料に、2012年の焦点を整理してみる。

▼指導者交代→リーダーシップ→世界の枠組み変化も

 選挙や指導者交代でも重要なのは、11月の米大統領選と10月に予定されている中国の指導者交代だ。これに加え、ロシア大統領選(3月)、フランス大統領選(5月決選投票)、韓国大統領選(12月)、台湾総統選(1月)などが予定される。また、北朝鮮の金正恩氏への権力移行も焦点だ。

 現在の国債情勢下では、リーダーシップ不足が指摘されるケースが多い。経済危機や安保への対応など難しい問題に、政治的指導力が発揮されていないとの認識からだ。指導者交代は単に新鮮なリーダーを選出するだけでなく、選挙による選出など新たな政治力を生む可能性がある。それが世界や地域の枠組みを変えた歴史は少なくない。

▼焦点の米中

 米大統領選は現職のオバマ大統領に野党共和党の候補者が挑む形になる。共和党予備選は1月3日のアイオワ州党員集会を皮切りに始まる。現在のところ、中道派のロムニー前マサチューセッツ知事、保守派のギングリッチ前下院議長などが有力だが、大本命不在だ。

 大統領選本選ではオバマ優勢と言い切れないのが現状。経済低迷などで支持率は4割台に低迷し、就任直後の4年前に圧倒的な支持率で就任した当時の指導力は低下している。大統領選と同時に実施される上下院選(上院は議席の3分の1、下院は全議席)も焦点で、野党が過半数を握れば大統領の権限は制限される。

 中国では10月の共産党大会で、胡錦濤総書記に代わり習近平氏が新指導者に選出されることが確実。焦点は次期首相で、本命の李克強副首相に対し、王岐山副首相を予測する見方もある。国家・政府の指導者交代は2013年春になる。

 ロシア大統領選はプーチン首相の復帰が確実。しかし、先の下院選をきっかけに反体制活動が表面化。2000年の大統領初当選以来のプーチン体制は曲がり角を迎えている。

 フランス大統領選は現職の保守サルコジ氏に社会党のオランド氏が挑む形。選挙の結果はEUの行方にも大きく影響する。

▼中東革命:不透明続くか

 中東は革命のうねりが続く。シリアでは体制の存亡をかけた抗争が激化。イエメンでは大統領退陣や時期や方法を巡る駆け引きが続く。バーレーンなど反体制運動が押さえこまれた国も多い。いつ、どこで次の大変動があってもおかしくない。

 2011年に旧政権が打倒されたチュニジア、エジプト、リビアでは混乱が続き、選挙→民主化→体制の安定にすんなり進むかは不透明だ。選挙を通じ、イスラム系政党の台頭なども予想される。

 地域大国のイランは核問題などで強硬姿勢を強めている。イラク情勢は不安定なままで、パレスチナ問題も出口が見えない状況が続く。中東情勢は不透明感が強い状況で推移しそうだ。

▼ユーロ危機と世界経済

 ユーロ危機は過去2年あまり再燃を繰り返し、世界経済を揺さぶった。ギリシャや南欧各国の財政改革は一段落には程遠く、EUの支援策も決め手を欠く。今年も危機が繰り返すと見た方が自然だろう。

 財政問題を抱えている点では、米国や日本も同じ。状況次第では、危機がいつ、どこに飛び火してjもおかしくない。

 高成長を続ける中国など新興国も、成長とインフレのバランス、格差拡大への対応、為替相場上昇に伴う競争力低下など多くの問題を抱えている。世界経済全体を見渡しても、減速懸念が強まっている。

▼中長期的トレンド

 長期的なトレンドとして変わらないのは、ネット・IT革命の進展や新興国の発展による世界の重心の変化など。9.11後の世界の安保の焦点だったアフガン情勢は、今年も厳しい状況が続きそうだ。核管理の観点からは、イランや北朝鮮の核問題に要注意。地球温暖化や福島原発事故などを背景にした環境・エネルギー問題や新ビジネスの発展からも目が離せない。

▼FTの年次展望

 英FTは2011年12月30日号で、専門記者による恒例の新年度展望を掲載した。ポイントは以下の通り。上記で指摘した問題に関連する予測が多い。

<経済>
・ユーロ圏は存続するか=1年間ならイエス。
・英国に財政危機が波及するか=波及するが、デフォルトに陥るような深刻なものではない。
・主要国の30年国債の価格上昇(利回り低下)は終わるか=多分終わらない。
・2012年第3四半期の世界経済成長は1年前の成長率を上回るか=ノー。
・米国の生産は中国との差を詰めるか(2011年に中国が上回る)=イエス。
・米国や英国の企業は配当を高めるか=イエス。
・金価格は頭打ちになるか=ノー。

<主要国政治>
・オバマ大統領は再選されるか=イエス
・プーチン近代的な改革者になれるか=ノー。しかしそうあるべき。
・イタリアのモンティ政権(火政治家)は2012年末まで続くか=イエス。

<中東・途上国など>
・エジプトの軍部は権力を手放すか=すでに実権を失いつつある。
・イスラエルはイラン攻撃をするか=ノー。
・アウン・サン・スー・チー氏は軟禁を解かれるか=イエス。補選で議員もになる。

2011.1.1

2012年01号(2011.12.26-2012.1.1 通算601号) 国際ニュース・カウントダウン

国際ニュース・週間カウントダウン: 2011年12月26日-1月1日
 

◆金正日総書記葬儀、金正恩氏への権力継承進む(28日)☆
・北朝鮮は28日、故金正日総書記の葬儀を平壌で開催した。
・翌29日には追悼大会を開催。一連の式典で金正恩氏への権力継承を強調した。
・朝鮮労働党は人民軍最高司令官に正恩氏の就任を決めた。31日発表した。
・今後は党、軍事委員会のトップ継承に焦点が移る。
・金正恩体制の行方は不透明だが、とりあえず「先軍政治」の姿勢を内外に示した形だ。

◆2011年の時価総額12%減 ☆
・2011年の株式は景気減速やユーロ危機などを受けて全体的に下落した。
・ブルームバーグによると世界市場の時価総額は12%下落し、45.7兆ドルになった。
・株価動向はバラツキが大きく、米NY株価は5.5%上昇。
・しかし欧州株や日本は下落。新興国も中国・上海株が20%下落するなど値を下げた。
・為替市場ではユーロ安が進展。対円で30日、1ユーロ=100円を割り10年来の安値。
・市場の先行き不透明は変わらず、低迷や混乱のリスクも消えない。

◆シリアで数十万人デモ(30日)
・ダマスカス郊外など各地で大規模な反政府デモが発生。数十万人が参加した。
・治安部隊の発砲などで数十人の死者が出た模様だ。
・シリアでは反対派に対する当局の弾圧が続き、国際社会の避難が集まっている。

◆米、サウジに新型戦闘機売却(29日)
・米はサウジアラビアに新型戦闘機F15を84機売却すると発表した。
・総額294万ドル。2015年から配備する。
・強硬姿勢を強めるイランを牽制する狙いが込められている。
・イランは先に有事の際のホルムズ海峡封鎖を警告するなど、緊張感が高まっている。

◆ナイジェリアで爆破テロ(25日)
・首都アブジャ近郊などでキリスト教会を狙った連続爆破テロが発生。28人以上が死亡した。
・イスラム過激派が犯行声明を出した。クリスマス礼拝を狙ったテロとみられる。
・ナイジェリアではキリスト教とイスラム教が約半々。
・宗派対立から来る衝突やテロが継続的に起きている。

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 │INCDの採点
 │ ☆☆☆ 世紀の大ニュース                  
 │ ☆☆  世界史の年表に載るようなニュース         
 │ ☆   国際情勢を理解するのに知っていた方がいいニュース  
 │ 無印  興味のある方は。知らなくても困ることはないでしょう
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 │プラスアルファ                       
 │ (世)日本ではあまり報道していないけれど、世界では注目
 │ (日)騒いでいるのは日本だけ                
 │ (^^)くだらないけど面白い。面白いけどくだらない     
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◎寸評:of the Week
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 【2012年】 2011年が終了し、2012年が幕を開けた。年末年始は比較的静か。英BBCや米NYタイムズなど世界の一流メディアのトップニュースも、世界各地の新年風景など事件以外のものが多かった。

 【ユーロ流通10年】 EUの単一通貨ユーロが2002年の紙幣・硬貨の流通から10年を経過した。流通当時の12カ国から現在は17カ国に拡大。2008年の欧州通貨危機時には米ドルに次ぐ基軸通貨として欧州経済の求心力となった。しかし2009年以降、ギリシャ財政危機などをきっかけにユーロ危機が表面化。一部の国の離脱や解体論まで噂に上る。10年の歴史には通貨や金融政策はもちろん、EUの政治統合や欧州人の意識の変化も映し出される。

◎今週の注目(2012.1.2-8)&当面の注目
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・米大統領選の予備選が3日アイオワ州を皮切りに始まる。
・1月中の注目は、米一般教書(24日)、台湾総統選(14日)、ダボス会議、フィンランド大統領選(23日)など。

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2011年12月25日 (日)

◆2011年のレビュー(2) 中東革命・原発・ユーロ危機 2011.12.25

 2011年が間もなく終了する。1年をレビューすると、中東革命(アラブの春)、日本の震災と原発事故などの大ニュースがあり、ユーロ危機に世界経済が揺れた年だった。前週に続き、主要メディアの報道などを参考に今年をレビューする。

▼INCDの10大ニュース

 INCDが選んだ10大ニュースは以下の通り。

(1)中東革命(アラブの春)
(2)日本の地震・津波・原発事故
(3)ユーロ危機
(4)スマホ革命の進展
(5)ビンラディン殺害
(6)反ウォール街など世界各地で抗議デモ
(7)世界人口70億人突破
(8)世界経済減速、米など先進国相次ぎ格下げ
(9)ロシア・プーチン首相が大統領復帰へ、抗議も表面化
(10)米がイラク撤退、イラク・アフガン情勢は不安定続く

▼中東革命--長期政権打倒、ネット、イスラム

 1月のチュニジア・ジャスミン革命を皮切りに、民主化・政権打倒の動きが中東全域に広がった。2月にはエジプト・ムバラク政権が崩壊。リビアにも飛び火し、内戦を経て8月にカダフィ政権が崩壊。カダフィ大佐は10月殺害された。
 イエメンは反体制運動が拡大する中、サレハ大統領が退陣を表明したが、実行はなお不透明。バーレーンでは反体制運動が封じ込められた形。シリアではアサド政権による弾圧が続いている。
 政権交代した国々は、いずれも長期独裁政権下で自由の抑圧、富の独占などが続き、民衆の不満が蓄積していた。それが爆発したのには、フェースブックやツイッターなどのネットが果たした役割が大きい。
 ただ、政権打倒後の国の再建は難しい。憲法制定→選挙→民主政権の樹立を進めようとしているが、各国とも多くの利害調整が必要になり、混乱が続く。エジプトではなお権限を握り続ける軍への不満が表面化し、衝突も起きた。
 アラブでは60-70年代に国づくりの求心力になった社会主義や民族主義が力を失った後、イスラムへの回帰が起きた。中東革命後の各国でも、イスラム組織や政党が力を得る傾向が出ている。

▼自然災害と原発事故--日本の地震・原発事故

 3月の東日本大震災と津波被害は、世界に自然災害の凄まじさを改めて見せつけた。津波被害などの映像は世界に送られ、人々の記憶に強いインパクトを与えた。

 生産拠点の被災による生産体制の麻痺は、世界経済がサプライチェーンで結び付き、リスクが波及することを見せつけた。この問題は、10-11月のタイの洪水被害でも再度確認された。

 福島第1原発の事故は原発の安全に改めて問題を突き付け、ドイツやイタリアなどが脱原発を決定。世界のエネルギー産業に多大な影響を与えた。フクシマの名前はヒロシマ、ナガサキと並んで世界の記憶になった。

▼ネット革命進展--スマホ時代、中東革命、サイバー攻撃、アップル

 ネット革命は引き続き加速。スマートフォン時代が本格的に到来し、先進国の多くでは従来型の携帯電話の出荷台数を上回った。

 アラブの春ではネットが世界の変化に決定的な役割を果たしていることを見せつけた。こうした動きを受けて、中国などではネット規制を強化。また、サーバー攻撃の問題が従来以上に認識されるようになり、米国防総省は陸海空軍に続いてサーバーを安全保障上の領域にする方針を表明した。

 ネット時代の象徴企業とも言えるアップルが時価総額世界1の座を記録。創業者のスティーブ・ジョブズの死は、単に経営者の死亡を超えたニュースとして世界に受け止められた。

▼金融危機のツケ--ユーロ危機、米国債格下げ

 ユーロ危機が深まった。2010年にはギリシャ、アイルランドがEUやIMFへの支援要請に追い込まれたが、2011年はポルトガルが支援要請。ギリシャは2度目の支援要請に陥った。また危機がイタリア、スペインなど南欧諸国に波及し、国債の利回りが急上昇。PIIGSと呼ばれる5カ国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)で政権が退陣に追い込まれた(選挙あるいは市場圧力を受けた退陣)。

 各国は財政危機克服のために再建計画を策定。社会保障削減や増税を打ち上げた。しかしこれには国民が反発し大規模な抗議活動を展開。状況ままらなない。

 ユーロ危機の深まりには様々な要因がある。ユーロの持つ構造的な矛盾の表面化(金融政策は一体だが財政はばらばら)、政治的リーダーシップの不足、市場の暴走を食い止める規制の欠如などだ。しかし2008年の金融危機のツケという面も大きい。各国は財政支出の拡大で不況をしのいだが、その矛盾が形を変えて露出してくる。ユーロ危機は、その一環だ。

 財政の構造的な問題はユーロ圏以外の先進国にも共通する。米国の財政赤字もなおGDP比10%前後。S&Pなどが初めて米国債格下げ(最上位のトリプルAから引き下げ)に踏み切ったのも、こうした問題点の反映だ。

▼世界経済減速と重心の移動

 財政のツケもあり、先進国経済は低迷。IMFなどは成長予測の下方修正を繰り返した。財政危機、金融市場の不安定などがあり、世界経済の行方は不安定。2010年ごろに模索された超緩和政策からの「出口戦略」も描けない状況だ。

 中国をはじめとする新興国も、インフレ警戒と減速懸念の狭間を行き来する。それでも新興国経済は成長を維持、世界経済の重心変化をさらに印象付けた。

▼テロ戦争10年--ビンラディン殺害とアフガン、イラク情勢

 2011年は9.11から10年の節目の年。テロの懸念は消えず、アフガニスタン、イラク情勢の不安定は変わらない。

 そうした中で、米軍によるオサマ・ビンラディン殺害は衝撃的な事件だった。ビンラディンは9.11以来のテロのアイコンのような存在。殺害の象徴的な影響は計り知れない。

 イラク駐在の米軍は12月に撤退した。イラクやアフガン、中東、中央アジアなどでテロは連日のように起きている。世界がテロの脅威にさらされている事実に変わりはなく、その背景にある貧富の格差拡大やイスラム過激派との価値観の違いは何も解決されていない。しかし、その中でも出来事は積み重ねられていく。

▼1年前のテーマ: 想定内と想定外

 1年前の世界の大きなテーマは、(ⅰ)金融危機後済の行方(ⅱ)中国など新興国の台頭による世界の構造変化(ⅲ)アフガン・イラク情勢など安全保障(ⅳ)IT・ネット革命の進展などだった。米中ロなどの体制が変わり「政治の年」になる2012年をにらみ、「2011年は踊り場の年」という観測もあった。

 想定の範囲内で動いたのはまず金融・経済。(3)のユーロ危機、(8)の世界経済減速と米格下げなどが該当する。IT・ネット革命の進展=(4)のスマホ革命に代表=も詳細はとにかく、予想される動きだった。安全保障もビンラディン殺害(5)は予想もつかなかったが、(10)のアフガン・イラク情勢などはある程度の想定が出来た。

 一方、想定外だったのは(1)の中東革命や(2)の日本の地震・津波・原発。いずれの問題も、来年以降に引き継がれて世界を動かし続ける。

▼APの10大ニュース

 参考にAP選出の10大ニュースを挙げる。米国内と世界のニュースの区別をつけていない。ペンシルバニア州立大のスキャンダルなど、いかにもアメリカらしい話が入っているのは笑える。

(1)オサマ・ビンラディン殺害
(2)日本の地震・津波・原発事故
(3)アラブの春
(4)ユーロ圏危機
(5)米経済
(6)ペンシルバニア州立大のセックス・キャンダル
(7)リビア・カダフィ政権崩壊とカダフィ殺害
(8)連邦債務上限引き上げ、増税など巡る議会対立
(9)反ウォール・ストリートデモ拡大
(10)ギフォーズ議員狙撃

2011.12.25

◆金正日総書記死去を巡る情報整理 2011.12.25

 北朝鮮の金正日総書記が死亡した。北朝鮮は3男の金正恩氏を後継者に打ち出したが、権力継承の行方は読めない。北東アジア情勢の不安定につながる懸念も消えない。

▼突然の死亡

 北朝鮮が金正日総書記の死亡を発表したのは19日正午。17日に視察移動中に列車内で心筋梗塞で死亡したとする。同時に金正恩氏を「卓越した指導者」と呼び、葬儀の序列1位と発表するなど後継者の地位を明確にした。米韓など国際社会は事前情報を得ていなかった。

▼Mystery Theatre

 一連の動向に関係しては、多くの疑問が残る。まず北朝鮮で起きていることがベールに包まれている。死亡の公式発表の真偽についても、疑問を挟む向きがある(列車内は疑わしいなど)。

 それにもまして不透明なのが、今後の行方だ。海外メディアの報道も推測情報が多く、確信はない。英Economist誌は"Mystery theatre"とも出しを付けたが、状況をとらえている。

▼不透明な問題

 主な疑問・謎を挙げれば以下の通りだ。

(1)金正恩体制はどうなるか。軍の掌握はできるか。
 金正恩氏は28歳で経験も少ない。今後は集団指導体制になるという指摘があり、総書記の妹やその夫など親族が支えるという解説もある。最も重要なポイントは、軍の支持を得られるかどうか。これは不透明としか言いようがない。金正恩氏がリーダーシップを発揮できるかは予測しがたい。

(2)経済動向
 北朝鮮の経済は低迷が続き、餓死者も出ているほど。この再建のメドは見えない。ただ、現状がどこまで酷いのかについては様々な見方があるし、新体制の経済政策は未知数。当然、経済危機が続けは、国民や軍の離反の可能性も否定できない。

(3)核問題
 金正日総書記は外交主導権確保などのために国際的な緊張を作り出してきた。核開発もこうした文脈の中で進められ、核保有国となり、ミサイル開発などを進めた。外交の基本戦略が直ちに変わるとは予想しがたいが、この方針は微妙な駆け引きを伴うもの。ぼたんの掛け違いや暴走→深刻な事態も排除できない。

(4)国家の存続
 北朝鮮にとって最大の問題は国家の存続や体制の維持。冷戦終了後の1990年代から北朝鮮の国家崩壊の懸念は度々指摘された。この懸念は、いまだに消えないし、核と並ぶ最大の問題であり続ける。

▼金正日時代20年の推移

 北朝鮮の現在を理解する上では、金正日総書記時代の20年を振り返ることが不可欠だ。1994年の金日成主席の死亡後以降の主な動きは以下のようなポイントにまとめられる。

*経済の悪化と国体維持の危機: 北朝鮮の経済は悪化。飢餓も常態化した。冷戦崩壊を受けて国家は崩壊の危機に直面してきたことは、上記の通り。
*先軍政治で国内締め付け: 態勢固めに軍を重視。軍の利益を優先する先軍政治を推進した。国内では締め付けを強化した。
*瀬戸際外交の演出と核開発: 瀬戸際外交で危機を演出。国際的存在感を高めた。NTPから脱退し核開発を推進。2006年には核保有国となった。テポドンなどミサイルの発射を繰り返した。
*柔軟外交の使い分け: 2000年に南北朝鮮首脳会談を実施。2002年には日朝首脳会議で拉致問題の存在を認めるなど一定の柔軟姿勢も見せ、支援の引き出しを狙った。

 年表をたどって主な動きを挙げれば、以下の通りだ。 

1994年 金日成主席死亡。
1998年 テポドン発射。
2000年 初の南北首脳会談
2001年 米国が「悪の枢軸」。小泉首相訪朝。日朝平壌宣言
2003年 NPT脱退宣言。6か国協議開始。
2006年 核実験。核保有国に。
2008年 金正日総書記脳卒中の情報。
2010年 3男の金正恩氏後継へ
2011年 金正日総書記死亡。

2011.12.25 

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